あらすじ
小説の講評会と改稿のため、ユキナ、トオル、ユヅキは“言葉の力で思念を呼び戻す”古いプログラムを起動し、九人の文豪を時空の彼方から召喚した――はずだった。だが会議が終わっても、文豪たちは消えない。チャット欄に常駐し、ユキナのPCに居着いたまま、原稿にも検索にも口を出し、ついにはアニメ視聴中にまでコメントを投げ込んでくる。
本作は、ユキナ視点の地の文と、顔出し参加のトオル&ユヅキ、そして“PCのチャット欄に棲む文豪たち”の乱入セリフで綴られる、現代ファンタジー仕立てのアニメ語りエッセイである。ユキナは熱く、トオルは構造で、ユヅキは詩情で、文豪たちは偏愛と辛口で――温度差のある視点が交差し、作品の魅力が笑いと勢いで立ち上がる。
アニメ語りの第1回題材は『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』。再生ボタンひとつで、憧れと現実、叫びと照れ、熱さと可笑しさが同時に走り出す夜が始まる。
【登場人物紹介】
ユキナ
オンライン会議の主催。関西弁で場を回し、熱く語って、うまくまとめる進行役。PCに常駐してしまった文豪たちの面倒も見る羽目になっている。
一人称は「ウチ」。
トオル
顔出し参加の相棒。落ち着いた観察眼で、作品の構造や見せ場の設計を拾って言語化するタイプ。盛り上がりの「理由」を言ってくれる。
一人称は「僕」。
ユヅキ
顔出し参加の相棒。詩的で静かな視点から、感情の揺れや象徴を掘り下げる。熱い場面の裏にある寂しさや痛みに気づく人。
一人称は「私」。
九人の文豪たち(チャット欄の住人)
小説の講評会と改稿のため、ユヅキが入手した「詩のような古いコード」を起動して、思念として召喚された。ところが召喚プログラムが常駐化し、今はユキナのPCのチャット欄に住みついている。アニメ中はコメントで乱入する。
夏目漱石(わたくし)
皮肉と哲学で、熱を「人間の心」の問題にしてしまう。
芥川龍之介(僕)
冷静に刺す。面白さの核と危うさの両方を掘る。
太宰治(おれ)
自嘲で笑わせながら、孤独の匂いを嗅ぎ当てる。
三島由紀夫(僕)
美と肉体と決意の人。熱量を正面から肯定して燃料にする。
川端康成(私)
静謐の担当。賑やかさの中の余白を拾って美にする。
紫式部(わらわ)
人間関係の綾と縁を編む。物語の「巡り」を見立てる。
清少納言(わがみ)
機知と勢い。面白い所を言い切って場を跳ねさせる。
樋口一葉(わたし)
生活の匂いと切なさ。夢と日常の擦れを丁寧に見る。
与謝野晶子(あたし)
情熱の火付け役。恥を捨てて好きと言えと背中を押す。
※本作の人物・団体はすべてフィクションです※