あらすじ

新学期の始まり、馨と渚は偶然同じ教室で出会う。特別な理由があったわけではなく、本当にただのきっかけのような会話から二人の関係は始まった。席が近かったこともあって、天気の話や昨日の出来事の話など、誰でも口にするような会話を重ねていくうちに、少しずつお互いの内側に踏み込むようになっていく。  そんな中で、二人が自然と盛り上がった話題が「夢」だった。渚は昔から夢をよく見るタイプで、その内容も奇妙だったり、どこか願いが形になったようだったりと、話の種になることが多い。  一方の馨も、夢には興味があり、誰かと夢を共有できたら面白いだろうと何となく考えていた。二人は「もしお互いの夢を見られたらいいね」と半分冗談のように笑いながら話すのだった。  ある日の放課後、二人はいつもどおりに下校する。その途中で今まで見たことのない、妙に存在感のある自販機を見つける。古びているのにどこか新しく、不思議な引力を持ったような佇まいだった。何気なく眺めただけのつもりが、その日を境に二人は夢を共有することとなる。  自販機から出てきたものがきっかけとなり共有される夢、現実の願望が滲み出たような優しい風景もあれば、言葉にできない不安が形を持って現れたようなものもある。淡々としているのにどこか余韻が残る光景ばかりだった。二人は夢の中で同じ感覚を体験し、一緒に驚いたり、立ち止まったり、何気ない会話を交わしたりする。現実では言葉にできなかった気持ちも、夢の中では自然と滲み出ていく。夢を通じて相手の心に触れ、相手の影や光に静かに寄り添いながら、少しずつ距離が縮まっていく。 日常はいつもと変わらず静かで、特別な事件が起きるわけでもない。それでも、二人の世界にはたしかに小さな変化が積み重なっていき、そこには言葉では説明できない温度があった。 この物語は、そんな不思議と日常が溶け合った世界を、淡々としたまま丁寧に描いた作品である。

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カクヨム
カクヨム2025/12/22
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