あらすじ
教科書には書いていない「正解」が、この現場にはある。
「全体を見て」と言われても、
どこから見ればいいのか分からなかった。
特別養護老人ホームのユニットに配属された新人・村田。
目にしたのは、先輩たちの不可解で、しかし鮮やかな所作だった。
高めに結び直されるポニーテール。
わずか半歩の椅子の移動。
音を立てずに引かれるカーテン。
自分の着古したTシャツが、場違いに思えるほど、
その動きには、一分の無駄もない。
早番、日勤、遅番、そして夜勤。
スタッフが重なり合う、わずかな時間の中で、
村田は「判断」という仕事の重さを知っていく。
「あえて手を出さない」という選択。
椅子を「半歩だけ寄せる」勇気。
正解は、どこにも書いていない。
それでも現場は、今日も静かに回っている。
これは、迷える新人が、
背中で語る先輩の姿を追いかけながら、
正解のない現場で、
自分だけの「立ち位置」を引き受けていく物語。