あらすじ
父の大切にしていた腕時計が、ある朝、静かに止まった。
修理なんて安いものだと思っていた高校二年生・真田琴葉は、放課後に一人で近所の時計屋へ向かう。
そこで告げられた修理費用は、想像以上の金額――五万円。
父には「修理は諦めた」と伝えたものの、どうしても気になってしまった琴葉は、
こっそりその時計屋でアルバイトを始めることになる。
時計に詳しいわけでも、特別な興味があるわけでもない。
ただ、「直したいだけ」のはずだった。
けれど、店で出会った常連の同年代の少女・羽鳥いと。
時計をファッションとして楽しむ、穏やかな友人・高瀬ひより。
三人で過ごす放課後の中で、琴葉の時間は少しずつ変わっていく。
雲の上のような高級時計に「すごいな」と思ったり、
かわいい時計に「いいかも」と感じたり、
そして――はじめて「自分の時計が欲しい」と思ったり。
止まっていた父の時計は、やがて動き出す。
けれど、新しく手に入れた自分の時計には、まだ自分が追いついていない。
それでもいい。
秒針は今日も回り続ける。
違う速さで進む三人の時間が、同じ場所で重なり合う、
やさしくて静かな“腕時計×女子高生”の物語。