あらすじ
目覚めた時、僕は暗い玉座に座っていた。
冷たい石造りの壁に囲まれた広い謁見室。その中央に置かれた玉座から見下ろす景色は、僕の知るはずもないファンタジーの城だった。だが、その光景は奇妙なほど懐かしい。なぜなら、僕はこれを前に見たことがあるからだ。
「……これは、まさか」
僕は自分の手を見た。真っ白な手ではなく、濃紫色の肌。爪は黒く、不気味に輝いている。心臓が早鐘を打った。
そうだ。僕は知っている。この城を。この玉座を。そしてこの身体を。
僕の名前は田中健太。三十五歳の冴えない会社員だった。毎日営業電話をかけ、上司に怒鳴られ、夜遅くまで残業して、帰宅後はゲームをする。そんな日々の繰り返し。その唯一の楽しみが、十年以上前にプレイした「聖剣伝説Ⅲ」というゲームだった。
そのゲームの最終ボス。それが、この身体の主人公。暗黒皇帝アーダーク。