あらすじ
明治三十九年。帝都から遠く離れた僻地「泥神村(どろがみむら)」へ赴任した、生真面目な新人巡査・奥田稔。 「法こそが文明の光」と信じる彼は、村の因習である人身売買のような神事「競り」に介入し、生贄とされていた美しき娘・フチを保護する。
嵐により孤立したボロ駐在所。震える彼女を匿う奥田だったが、雨音と共に彼女の肌から立ち昇る甘く湿った匂いが、堅牢な理性を狂わせていく。 「おまわり様、硬いものは邪魔でございます」 剥がされる制服、捨てられるサーベル。 助けたつもりだった彼は、いつしか彼女という「底なしの沼」に引きずり込まれていたことに気づく——。
近代の権威が土着の愛欲に敗北し、一人の男が「神の婿」として泥に還るまでの、一夜の没落の記録。
※この作品には、人外との交わりを描く、湿度高めの官能描写が含まれます。