あらすじ
後宮の片隅、掃除や設えを担う「掃部司(かもんし)」で働く弥宝(ミーパオ)には、誰にも言えない秘密がある。
それは、三年前に「国宝偽造」の濡れ衣で処刑された、伝説の表具師の娘であること。
目立たず平穏に生きることを誓った彼女だったが、ある宴の席、友人の危機を救うために「禁断の技術」を披露してしまう。
バラバラに砕けた翡翠の玉杯を、わずか数分で「割れる前より美しく」繋ぎ合わせた彼女の前に現れたのは、内侍府の冷徹な長官・蒼彗(ツァンフイ)だった。
「お前のその指……膠(にかわ)の匂いが染み付いているな」
正体を見抜かれ、蒼彗の「道具」として囚われた弥宝。
彼女に命じられたのは、後宮に渦巻く呪いの品や軍事機密を、その神業的な「修復」で塗り潰し、都合のいい「真実」へと書き換えることだった。
黄金の漆で嘘を綴るたび、弥宝は父を陥れた巨大な陰謀へと近づいていく。
そして、自分を「使い潰す」と断言したはずの蒼彗の瞳には、いつしか執着にも似た熱が宿り始め――。
「修復師は時間を繋ぎ止める仕事。……たとえそれが、美しき偽りであっても」
職人の矜持と、後宮の闇が交錯する、中華風お仕事ミステリー。