あらすじ
夕日に染まった、真っ赤な顔。
唇を小さく震わせて、
怯えた小動物みたいに、俺を見上げている。
大丈夫だ。
俺は、君を食べたりしない。
……そう、思っていた。
小さくて、か弱そうで。
なのに、会社では俺の先輩。
友人のマンションに泊まった夜。
そこに、君がいた。
それから、何度か顔を合わせるようになった。
今まで、特別に女性を意識したことはない。
欲しいと思ったことも、なかった。
なのに、君だけは違った。
赤くて、細くて、柔らかそうで。
壊れてしまいそうで。
目が、離せない。
触れてみたい。
確かめてみたい。
友人の手前、
この感情は押し殺すしかなかった。
興味なんて、持ってはいけない。
欲情なんて、論外だ。
けれど。
抑えた分だけ、
気持ちは静かに、膨らんでいく。
そんなある日。
君は、俺にお願いをした。
考えるより先に、
口から零れた言葉。
「……キス、してくれたら、いいよ?」
一瞬、見開かれた君の瞳。
きらきらしていて、
あまりにも無防備で。
一番驚いたのは、俺だった。
ああ、やばい。
これ以上、近づいたら。
たぶん、もう止まらない。
大学時代から、やたらと人気のあった友人。
君は、きっとその恋人。
魅力的なのは、当然だ。
その仕草。
その表情。
その、弱さ。
俺にとって。
いや、男にとって。
君は
どうしようもなく
魔性だった。
恋愛に不器用な人ほど、 落ちるときは早く、深い。 これは 「守りたい」と「触れたい」の境界線を 踏み越えてしまった男の物語です。