あらすじ
壊れゆく東京で“誰にも記録されない少女”は生きていた。
戸籍も家族も未来もない。
それでもミナは、バイトと小さな部屋だけで、
自分の世界を何とか保とうとしていた。
ある夜、逃げ込んだ路地で出会ったのは、
年齢不相応に静かで、異様に整った動きをする少年――千景。
彼はまるで“普通の高校生”のように暮らしている。
だがその裏で、誰にも言えない精密さで街の犯罪を処理する
賞金稼ぎとしての顔を持っていた。
千景はミナを助け、保護し、
二人の奇妙な共同生活が始まる。
温度のない優しさ。
淡々と整った生活。
踏み込むでも、突き放すでもない距離。
そしてミナの日常の外側では、
戸籍を持たない若者を“商品”として扱う闇と、
遠くからただ静かに見つめる“紅い影”が動き始める。
少女は追われ、社会に拒絶され、
名前を捨て、新しい人生を選ばされる。
少年は、ただ目の前の命を守るためだけに動く。
これは壊れた国でふたりが生き延びるための、
小さくて、痛くて、優しい、灰色の物語。