あらすじ
王城のバルコニー。冷徹な王太子・フリードリヒは、婚約者である公爵令嬢エリゼに告げた。
「お前との婚約を破棄する。これからは、愛らしく、私を支えてくれる妹のマリアを正妃に据える。お前のような可愛げのない女は、マリアを引き立てるための『噛ませ犬』に過ぎなかったのだ」
静まり返る周囲。だが、エリゼは泣き崩れなかった。
彼女はドレスの裾をむんずと掴んで引きちぎると、野獣のような鋭い眼光で王太子を睨みつけた。
「……誰が、噛ませ犬だって?」
低く、地を這うような声。
「おい、フリードリヒ! よく聞け! 私は、お前の噛ませ犬じゃないぞ!」
その叫びは、王城の壁を震わせた。彼女はそのまま、呆然とする二人を置いて、野良犬のように笑いながら去っていった。