あらすじ
白い壁に囲まれた閉鎖世界〈マーセレス〉。
そこでは人々の感情が数値で管理され、「幸福であること」だけが正解とされていた。
少年レイと少女ナギもまた、その世界で生まれ育った。
食事は均一、生活は安全、未来は用意されている。
それでも二人の胸には、説明できない違和感が残り続けていた。
なぜ空の話題になると大人たちは黙るのか。
なぜ悲しみ続けると、周囲の視線が変わるのか。
なぜ「幸せ」は、測られなければならないのか。
疑問を口にすることは許されない。
考えすぎれば、数値は下がる。
下がり続けた者は、いつの間にか姿を消す。
それでもレイとナギは、世界の仕組みに抗うように、壁の向こうにあるかもしれない“何か”を想像し続けた。
知らないからこそ、知りたい。
与えられた答えではなく、自分で確かめたい。
これは、閉ざされた世界の中で、それでも「人として生きよう」とした子どもたちの物語。
彼らの選択が、この完璧に管理された世界に、静かな歪みを生み始める――。