あらすじ

霊峰の奥深く人間がほとんど足を踏み入れぬ、禁足地に近い静寂の地に、ひとりの竜人が暮らしていた。 名をウロボロスという。氷の鱗を思わせる白銀の髪と、透き通るような青い瞳をもつ、美しい青年である。 彼はそこで鍛治士として生きていた。といっても、山の麓の小さな村から頼まれるのは、クワやシャベルといった生活の道具ばかりだ。折れた柄を直し、刃こぼれした鉄を鍛ち直す。そんな穏やかな日々の合間に、ウロボロスはひっそりと、自分のための剣を打った。誰に見せるでもない、美しさだけを追い求めた剣を。 彼が住む屋敷は、青を基調とした静謐な空間で満ちている。外気と同じく冴え冴えと冷え、氷の属性を宿す竜人にはこの上なく心地よい。 だが屋敷の奥にただ一室だけ、雰囲気をまるで異にする場所があった。鍛治場――ウロボロスが情熱を注ぐ、熱と轟音の砦だ。 そこだけは氷の息吹を拒むかのように、炉の赤光が揺らめき、石の床に熱が満ちている。 冷気の住まう屋敷の中心に、燃え盛る心臓がひとつ埋め込まれているかのようだった。 ウロボロスはその異質な空間で、今日も静かに鉄を打つ。 氷の竜人でありながら、火花の中で最も美しい形を生み出すことに、誰よりも熱を抱きながら。

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小説を読もう2025/12/21
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