あらすじ
結婚三年目。
言葉を交わさなくなった夫婦が、まだ“夫婦”として暮らしていた。
瀬川蒼一(せがわそういち)は、静かに壊れていく日常にただ身を任せていた。
朝には冷えた朝食、夜には空の食卓。
隣にいるはずの妻・奈々とは、もう目も合わせない。
それでも、形だけの“優しさ”は残っていた。
彼女は朝食を作り、彼はそれを食べない。
誰も怒らないし、誰も泣かない。
だけど、どこかで何かが確実に、音を立てずに崩れていく。
そんな蒼一の前に現れたのは、
明るく無垢な後輩、静かな司書、そして――
過去に彼の“初めて”を奪った女。
そしてやがて、沈黙の向こうにいた“恋人”の正体が明かされる。
これは、愛せなかった人を、
ようやく愛そうとした、
ある夫婦の物語。