あらすじ
「九条さん、これは文学じゃない。ただのゴミです」
かつての教え子であり、今は売れっ子編集者となった佐伯(さえき)に突きつけられた冷酷な宣告。
二十年間、人生のすべてを捧げて積み上げた数百万字の原稿は、誰にも読まれないまま古いアパートで腐り続けていた。
「観測されない物語は、この世に存在しないのと同じなんですよ」
量子力学の如き理屈で『無』を証明された俺は、自らの二十年を供養するため、カクヨムの海に遺書代わりに物語を放流し、退会を決意する。
アクセス数は、いつまで経っても『0』のまま。
俺の人生は、無意味だった。
すべてを消去しようとしたその時、一通のメッセージが届く。
――『拝読しました。非常に不愉快な小説でした』
届いたのは、救いでも感動でもない、たった一人の読者からの痛烈な「否定」だった。
だが、その罵倒の裏側に隠された、あまりに重すぎる「ある真実」を知った時、俺の絶望は全く別の色彩を帯び始める。
これは、誰にも見向きもされなかった「文字の死体」を、たった一人の執着的な「観測者」が蘇らせる、再起と救済の記録。
「読まれない小説に、意味はあるか」――その残酷な問いへの答えが、ここにある。