あらすじ
商人ギルドの端っこで干し肉を売り、値切られて終わる日々。父の残した家はあるが、仕込みに金が消え、腹は満たせない。生活を立て直し、まとまった金を作って旅に出たい――そう思いながらも、ハルは「売れない商人」のまま立ち尽くしていた。
そんな彼の前に現れたのは、千年を生きたフェンリル。人間どもが勝手に“ガルム”と呼ぶ獣だ。気遣いも慰めもない。ただ淡々と、稼ぐ筋だけを示す。父の形見「金の筒」を温めると立ち上る“金の匂い”。その筋を追い、ハルは冒険者ギルドで納入札を作り、魔獣猪の胆嚢を治療院へ売って初めて金貨を掴む。
匂いの先にあったのは、貴族が使う傷薬の材料になるという光る樹脂。だが採取場には先客の冒険者たち、さらに洞の奥には得体の知れない気配が潜んでいた。稼ぎは近い。危険も近い。――それでもハルは、金の匂いがする方へ歩き出す。