あらすじ

高い場所から遠くを見るのが好きな少女は、まだ槍も弓も持たず、ただ風の音に耳を澄ませていた。 ある日、彼女は異変に気づき、必死に走って知らせようとする。だが息は切れ、声は届かず、彼女の目に映ったのは、遠くで燃える景色だけだった。 生き残った彼女は学ぶ。 走れば間に合うとは限らない。 近づけば守れるとも限らない。 それ以来、彼女は走らず、先に立つことを選ぶ。 距離を保ち、風を読み、弓で届かせ、短槍で近づかせない―― その戦い方は、やがて風走り隊の思想と重なり、彼女は隊に加わる。 異端の装備と走らない動き。だが判断は早く、確実だった。 戦場で誰かが何気なく呼んだ名が、いつしか定着する。 「遠くから、風のように戦う者」――遠風。 正しい判断を重ねながらも、彼女は気づいていく。 判断が正しくても、救えないものがあること。 風走りは判断を共有する隊であり、彼女は判断を独りで完結させる人間であることを。 最後の戦いのあと、誰にも責められることなく、彼女は隊を離れる。 走らず、名を訂正することもなく。 こうして本名は風の中に消え、 「遠風」という呼び名だけが、戦場に残った。 それは、彼女が一人で立つことを選んだ証だった。

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小説を読もう2025/12/20
  • 現在の作品『遠風Ⅱ(とおかぜ)──遠風が名になるまで』