あらすじ

都内某所、総理官邸の地下にある“会議室とは呼べない部屋”で、高地位早成子(たかちいさなりこ) は鏡に映る自分を見つめていた。 ――ビール・ゲッツ。 支配者DS(ディープステート)の表の顔を担う男であり、イルミナティカードの解釈者。 高地位は鼻で笑った。 「煽って煽って煽って……(服装も)青って」 彼女の背後で、影がゆらりと揺れた。 鹿の角のようなシルエットが、一瞬だけ壁に浮かぶ。 鹿とコモドドラゴン――二つの遺伝子を掛け合わされた怪人としての本性は、まだ誰にも知られていない。 「中国との戦争、台湾有事……次は何を煽れっていうの?」 『全部だ』 『恐怖は最も効率のいい投資促進剤だ』 通信は一方的に切れた。 数日後。 都内ホテルで開催された、サウジアラビア系ファンド主催の国際金融会合。 壇上に立った高地位早成子は、完璧な“青”に包まれていた。 照明を反射するその姿は、どこか人間離れして見える。 彼女は原稿から目を離し、突然、口角を上げた。 「ジャスト・シャット・ユア・マウス&インベスト・エブリシング・イン・ミー」 会場が、一瞬、凍りつく。 「――いいから黙って、全部、私に投資しろ」 人気漫画『進撃の大きな人』のセリフ。 サウジでも知られている“はず”の言葉。 だが、通訳が一拍遅れ、英語の発音は微妙に揺れ、 投資家たちの表情はそろって「ポカン」としたものになる。 (……ああ、反応が薄い) 高地位の瞳が、かすかに爬虫類のそれへと変わる。 (でも、これでいい) 彼女の任務は「成功」ではない。 世界を煽り、分断し、次の段階へ進めること。 その頃、別の場所では―― 悪意なき世界支配を目指す勢力の一人、ブレンダが、モニター越しにその様子を見ていた。 「……鹿怪人、ついに表に出たわね」 彼女の隣で、リュウホウが腕を組む。 「庶民が主導する世界に変えるためには、ああいう“分かりやすい支配者”が必要になる」 「敵は、姿を現してくれたほうがいい」 モニターの中で、高地位早成子は微笑んでいた。 その背後に、誰にも見えないはずの影―― 巨大な鹿の角と、コモドドラゴンの尾が、ゆっくりと蠢く。 こうして、 鹿怪人の女総理は誕生した。 世界が、次の章へ進む音がした。

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