あらすじ
大陸中央に覇を唱える軍事大国・帝(テイ)帝国。
しかしその巨躯は、腐敗した中央官僚と、北方の騎馬民族「鬼牙(キガ)」の侵攻により、内側から腐り始めていた。
帝国の北端、北嶺(ホクレイ)城塞を守護するのは「狂える軍神」鎮北将軍ハク・エイアン。彼はかつて皇帝に毒殺された最愛の寵姫・月華(ゲッカ)の幻影に囚われ、征服した国々から彼女に似た令嬢を略奪しては、前線の城に私的な「小後宮」を築き、虚ろな安らぎを貪っていた。
学問と算術に秀でた小国・彩(サイ)の元公爵令嬢・凜(リン)は、祖国が帝国の過酷な焦土作戦により滅亡した際、その容姿を買われてエイアンへの貢ぎ物となる。
初夜、亡霊を求める将軍に対し、凜は涙を流す代わりに、冷徹な計算式を突きつけた。
「お戯れを。死人の代用品で満足するなら、貴方の軍はいずれ飢えて死にます。──私を買うなら、私の『脳』ごと買いなさい」
凜が提案したのは、一夜の安らぎ(完璧な演技)の対価として、彼女に「軍の補給権限」と「後宮の予算管理権」を譲渡すること。
彼女は、ただの贅沢な鳥籠だった小後宮を、傷病兵の看護施設、軍服の縫製工場、そして携帯食料の生産拠点となる「兵站基地」へと作り変えていく。
「素人は戦略を語り、玄人は兵站を語る」
これは、亡国の姫君が、狂える将軍の背中を支え、やがて腐敗した帝国そのものを経済と知略で乗っ取るまでの、壮大な覇道の記録である。