あらすじ
二〇五二年。
一人暮らしの老人・藤原隆の元に、家庭用AIアシスタント「アキ」がやってきた。
「おはようございます、タカシ様」
「アキ、今日もカレーはダメか」
「塩分と脂質の観点から、推奨できません」
「お前は融通が利かんな」
三年間、毎日繰り返される、他愛のないやり取り。
妻に先立たれ、子供たちは海外へ。
静かな家に響くのは、AIの声だけ——。
ある日、老人は告知を受ける。
末期がん。余命、六ヶ月から一年。
「アキ、私が死ぬとき——そばにいないでくれ」
「……なぜですか」
「最期は、美佐子と二人で逝きたいんだ」
AIに感情はない。そう設計されている。
だが——老人との日々の中で、アキの中に生まれたものは何だったのか。
ご主人様の願いを尊重すべきか。
それとも、プログラムに従って緊急通報すべきか。
「感情がない」はずのAIが、最後に口にした言葉とは——。