あらすじ

街の入口には、秤が置いてある。 人が入る前に、必ず名前を量られる。 音の重さ。 意味の深さ。 呼ばれた回数の多さ。 重い名前ほど、街で生きやすい。 イオが秤の前に立つと、係の男は一瞬、言葉を失った。 「……減ってない」 「はい?」 「君の名前だ。一文字も、削れていない」 周囲がざわめく。 名前は生きていれば必ず摩耗する。 呼ばれ、使われ、忘れられ、削れていくものだからだ。 「気をつけろよ、少年」 男は低い声で言った。 「この街は、綺麗な名前から先に食う」 その夜。 イオは路地裏で、少女に出会う。 「あなたの名前、すごくうるさいね」 「……うるさい?」 「生きたいって音がする」 彼女は笑った。 名を呼ばれたことのない人間の、笑い方だった。

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小説を読もう2025/12/19
  • 現在の作品名前を食べる街