あらすじ
――間違った狂騒が、唯一無二の旋律と出会う時。
終末後、世界の王座は〈ペアリング〉という奇妙な理(ことわり)で塗り替えられた。
特定の〈鍵穴〉と〈鍵〉が邂逅(であ)えば、現実を組み直す力が目覚める。
だが、ほぼ全ての組み合わせは“間違い”で――
彼女たちは廃墟の上に、歪で妖しい王国を築き上げた。
極楽の殿では、感覚の暴君が苦痛を琥珀色の酒に変え、人々を陶酔に沈める。
鋼鉄の聖母院では、愛という名の秩序が、血肉を冷たい戒律へと鍛え直す。
黙示の園に逃れた者たちは、永遠の静寂の中で、最後の穢れなき土地を守り続ける。
永痛の巡礼路を、孤独な聖徒は己を信仰の尖塔に打ち付けるため、歩みを止めない。
残響の檻で、狂おしいほどの愛に囚われた姉妹は、互いを傷つけ合い、幻の完全を探る。
彼女たちは“間違い”によって強大となり、“間違い”によって世界を深淵へ導いた。
それが変わったのは、
全身に無数の〈穴〉を穿たれた異邦の来訪者・ミサンが、
何の飾りもない一つの鍵を握る盲目の少女・ギョウと出会った、その瞬間から。
有史以来、初めての“正しい”ペアリングが誕生した。
古の予言に謳われる〈世界の修復者〉となるべき二人は、
同時に、あらゆる“間違い”で栄える者たちにとって、最も危険な異端と見なされる。
これは、女性たちの欲望と執念、愛と憎悪が織り成す終末絵巻の上で、
華麗に、そして苛烈に繰り広げられる――
逃亡と調律、そして〈終わりの音律〉を巡る物語。
「離さないで、ギョウ」
「あなたの鍵で、私を開けて――この絶望の世界そのものを開けて」
「そして、すべての雑音に、終止符を打とう」