あらすじ

目が覚めたとき、空は低かった。 そこに現れた白い服の女は、淡々と告げる。 「夢を聞いて、書く。死者の。」 死者は成仏する前に、一度だけ夢を見る。 その最後の夢を聞き取り、ノートに記録する—— それが、僕に与えられた「職業」だった。 語られる夢は、どれも些細だ。 パンを買う。洗濯物を干す。靴下が風に飛ぶ。 戦争も、死の瞬間も、英雄譚も出てこない。 あるのは、どこにでもある生活の断片だけ。 だが、記録を重ねるうちに、夢は同じ風景へ収束していく。 川。ベンチ。夕方。 繰り返される単語は輪郭を持ち、やがて境界を曖昧にする。 死者の夢と、この場所と、僕自身の記憶が、少しずつ混ざっていく。 ページが埋まれば、新しいノートが現れる。 夕方は夜にならない。 死者は途切れない。 記録だけが終わらない。 救いは明示されない。 意味も与えられない。 それでも、書かれた文字だけが残っていく。 これは、 死者の夢を記録する“仕事”に閉じ込められた語り手が、 記憶と世界の境界の薄さを受け入れていく静かな異世界譚。

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カクヨム
カクヨム2025/12/17
  • 現在の作品異世界で死者の夢を記録する仕事