あらすじ
「英雄アルセイド・グランフェルの名において、ここに王都を、国家を、断罪する」
その一声が響いた瞬間、世界は静かに終わりを告げた。
かつて世界を救った英雄アルセイド。
人々に讃えられ、国の象徴となった男は、今やその国を焼き払う側にいた。
――最愛の妻、エリーナを失ったからだ。
理想を掲げた国家の歪みと、偽りの平和の果てにあるものを知った彼は、全てに背を向けた。
戦場の果てで、かつての仲間たちの声も届かない。
唯一、彼の傍に残ったのは、側近セラただひとり。
心を閉ざし、怒りと虚無に突き動かされるまま滅ぼし終えたその日、アルセイドはふと笑う。
「もう一回、世界救ってやるかぁ」
手にしたのは、かつて彼自身が作り出した時を戻す魔導具。
後悔と喪失の果てに、彼は時間そのものに手を伸ばす。
もしやり直せるのなら、もう一度救いたい。
失ったものを、取り戻せるのなら。
だが、一度死ぬことが確定した人間は、根本的原因を排除しない限り未来は変わらない。
英雄が挑むのは、偶然の悲劇ではなく、必然に仕組まれた運命そのものだった。
こうして始まるのは、英雄の栄光でも、反逆者の末路でもない。
――何度世界を繰り返しても、「彼女」を救おうとする、ひとりの男の物語。
運命を壊し、時間を超え、英雄は再び剣を取る。
その瞳に映るのは、絶望の続きか、それとも新たな希望か。