あらすじ

十月の土曜の夕暮れ、大学生の「僕」は公園のベンチの下で古びた日本人形を見つけた。陽気で好奇心旺盛な僕は、それを「ネタ」として拾い、SNSに投稿する。#呪いの人形 というハッシュタグは瞬く間に拡散し、コメント欄は恐怖と笑いで賑わう。友人に止められても、「面白いじゃん」と笑い飛ばす。  翌日、人形の目が開いたように見えたが、気のせいだと写真を撮って投稿した。「やばい」「逃げろ」という反応が増えるほど、彼は快感を覚える。やがて人形と暮らすことが日常になり、怖さよりも愛着が勝っていく。  朝、枕元に人形が移動していても「ネタになる」と笑い、写真をアップする。人形の存在は彼の生活に完全に溶け込んでいった。  一方、もうひとつの「僕」は違った。同じ公園、同じ人形を前に立ちすくみ、指先にまで冷たい震えが走る。拾う決断に何分もかかり、ハンカチ越しに慎重に包み込む。帰宅しても落ち着かず、夜は風音ひとつに怯える。  翌朝には神社へ行き、お祓いを受けて人形を手放した。すれ違う空気の中を歩きながら、「もう終わった」と胸をなでおろす。だが、あの人形はなぜそこにあったのか――その理由だけが心の底で微かに残る。明るく笑いながら呪いをコンテンツに変える僕と、恐れながらも礼を尽くして手放した僕。  同じ十月の午後、同じ少女の形をした人形を拾い、片方はその人形と共に暮らし、もう片方は二度と振り返らなかった。光の中と影の中、二つの部屋で異なる結末を迎える。だがどちらの夜も静かに更け、ただ人形だけが、誰に見られぬまま微笑んでいた。

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エブリスタ
エブリスタ2025/12/16
  • 現在の作品呪いの人形を拾った日