あらすじ
あるところに絶世の美女と謳われる少女がいました。
かつて少女は両親の庇護のもと、可憐な姫君として愛され慈しまれながら育ちました。
しかし、悲劇が訪れます。
少女の両親が亡くなってしまうのです。
領地も財産も叔父夫妻に預けた少女は、それでも幸福を掴み取ろうと彼女なりに懸命に生きようとします。
けれど、それを邪魔するものがありました。
少女はひどく美しいですが、ひどく――無能だったのです。
美貌のお姫様の正体。それは、手先が不器用で頭の回転も鈍く、賢いとは到底言い切れぬ、凡庸以下の少女でした。
それでも叔父一家は、家族を亡くした少女を歓迎してくれます。
可憐で美しい少女は、それだけで宝石のようだったからです。
けれど少女自身はそうはいきません。
亡き両親の顔に泥を塗るわけにはいかず、何としてでも自分の有用性を示さなければいけませんでした。
少女は自分にできることを、自分なりに懸命に行いました。
それがたとえ「ひとりよがり」と言われても「空回り」と蔑まれても。
美しいだけの自分を快く受け入れてくれた叔父一家に報いるために、王太子のお妃候補にだって名乗り出ました。
けれど、ある日。
期待と保身に苛まれた少女は、自分の中で「ぷつん」という音を聞きました。
気持ちの途切れる音です。
そうして少女は城を出奔し、広い世界へ繰り出します。そこならきっと、自分の生きる道があると信じて……。
ですが、現実は早々甘くはありませんでした。
行く先々でただひたすら自分が「役立たず」で「無能」であることを突き付けられる日々。
少女は絶望し、己に失望します。そして、決めました。
「そうだ! ――死のう」
そうして少女は、命を絶つために《眠れる森》と呼ばれる死に場所へと赴きました。
生きることに絶望した少女が、生きるということを知る物語。