あらすじ
紫霞
――真実と虚偽の境目、視界を曇らせる思考の霧
贋作師・佐竹紘が、アイリス探偵事務所に依頼を持ち込んだ。
佐竹のジュエリーブランド『Purple Veil—4』と提携したばかりの工房で、若きデザイナー・紫月晶人が死亡したのだ。
現場には薬品の痕跡が残り、警察は「作業中の誤飲による事故死」と判断する。
だが、宝石デザイナーである佐竹紘の違和感から、探偵・御影と西村は独自に調査を開始する。
葬儀で浮かび上がったのは、
晶人と固く結ばれた四人の仲間――
そして、誰の記憶にもはっきりと残らない
「五人目」の存在だった。
滝沢海。
無口で目立たず、
いつの間にか、誰も話題にしなくなった少女。
彼女の足取りを追うほど、
生活の痕跡は不自然なほど薄く、
やがて、晶人が最後まで完成させようとしていた
アメジストの意味が明らかになっていく。
事故とされた死。
貼り替えられたラベル。
一致しない薬品成分。
そして判明する――
「正しいものを使ったつもりの殺意」と、
社会が見過ごしてきた、
あまりにも小さな歪み。
紫は、消そうと思えば消せる色。
だから人は、油断する。
選ばれなかった者の紫に埋もれた真実が、
静かに、だが確かに暴かれていく――。
短編ミステリー