あらすじ
そのスマホ、壊れる前に“消える”かもしれない。
………
スマホは壊れたわけじゃない。
ただ、店から消えただけだった。
VRゲームとAIが当たり前になった近未来。
ある日、街の家電量販店から「普通のスマホ」が姿を消す。
理由を知っている者は、誰もいない。
主人公の〈僕〉は、近所に住む67歳のおじいちゃんと出会う。
二年前、0円で手に入れたスマホを使い続け、
小説投稿サイトに毎日文章を書いている、不思議と前向きな老人だ。
だが、そのスマホのメモリーは4GB。
動画は止まり、画面は固まり、
それでも「まだ動くから大丈夫」と笑っている。
調べるうちに〈僕〉は気づく。
スマホが消えた理由は故障でも不況でもない。
**AIデータセンターに“メモリーが吸い取られている”**のだ。
儲かる場所へ。
静かに、確実に。
個人の端末は、後回しにされていく。
やがて訪れる「壊れたその日」。
店に並ぶのは、15万円の端末だけ。
選択肢は、もう残っていない。
これは世界が壊れる話じゃない。
“考えなくなった日常”が、先に切り捨てられる物語だ。