あらすじ
風走りが戦場を駆け抜け、
盾を捨てた新兵が前線の形を変えたあと――
戦場には、奇妙な静けさが残った。
敵も味方も、
「どこから死が来たのか」を語れない戦が増えていく。
矢は飛ぶ。
だが、風走りのように近づく者はいない。
彼女は走らない。
戦場の外縁を移動し、
距離を保ったまま、矢を放つ。
撃つのは敵だけではない。
進軍の角度、退路、判断の遅れ――
彼女の矢は、選択そのものを射抜く。
名を持たず、称えられず、
戦場の記録にもほとんど残らない存在。
人々はそれを、
風走りの亜種と呼んだ。
ある者は、臆病な風走りだと嗤った。
だが彼女は知っている。
近づかないからこそ、
救える命があることを。
これは、
走らぬ風が戦場に残した、
もう一つの答えの物語。