あらすじ
古いアパートの一室で暮らす〈私〉は、毎晩午前二時十四分になると、壁を叩く音を聞くようになる。
それは決まって内側から響き、「あけて」という声が、自分の名前を呼ぶ。
最初は幻聴だと思っていた。
だが、過去の記憶が曖昧であること、この部屋に来る以前の人生を思い出せないことに気づいた時、〈私〉は違和感を覚え始める。
やがて見つかる一枚の写真と、壁に残された不自然な痕跡。
壁の向こうにいる“何か”は、他人ではなく、〈私〉自身と深く結びついている存在だと分かっていく。
壁を開けるべきか。
それとも、開けてはいけないのか。
選択の先にあるのは救いか、消失か。
静かな恐怖と自己認識の崩壊を描く、閉ざされた一室のホラー。