あらすじ

大学時代、何もしていなかった太一は、演劇サークルで輝く健太の演技に心を打たれる。役者ではなく芸人になりたいという健太に誘われ、二人は「もしもあの時」というコンビを組む。ネタはすべて「もしもあの時」から始まり、健太の仮定を太一が即座に否定する形で進む。結成から十年、単独ライブまでこぎつけたものの、売れない時期が長く続き、やがて事務所から事実上の引退勧告を受ける。  実家の町工場を継ぐよう父に迫られていた健太は、ついに芸人を辞めて戻る決意を固め、太一も普通の会社員として働き始める。それから一年、太一は自分たちの芸人時代を後悔していないと感じつつも、過去を封じたまま淡々と日々を送っていた。  ある日、街で昔のファンに声をかけられ、披露したことのないネタ「もしもあの時、俺たちが出会ってなかったら」の動画がネットに上がっていると知らされる。動画の中で健太は、もし太一と出会わず普通に生きていても悪くはなかっただろうが、太一と出会えたことで夢を追え、人生を後悔していないと涙ながらに語っていた。その言葉に胸を打たれた太一は健太に電話をし、お互いに十年間を悔いていないと確かめ合う。やがて健太は再び芸人をやりたいと打ち明け、今度はピンでの再出発を考えていると話す。太一はそこで、自分も戻りたい気持ちを抑えられなくなり、「もう一度一緒にやろう」と申し出る。  再結成した「もしもあの時」は、小さなライブハウスからやり直し、今度は「もしも」に否定だけでなく肯定を重ねていくネタへと進化させていく。過去の選択を悔やむのではなく、「あの時があったから今がある」と笑いに変える芸風は少しずつ人々の共感を呼び、二人は賞レースを勝ち上がり、ついには優勝を果たす。テレビで活躍する人気芸人となっても、原点の小さな劇場に立ち続ける二人は、何度も「もしもあの時」と自分たちの人生を振り返る。それでも結論はいつも同じだった――すべての「もしも」が今につながっている。   二十五周年ライブで満員の観客からスタンディングオベーションを受けた夜、太一は健太に「もう『もしもあの時』は考えない」と言う。後悔ではなく、「これから」を見据えて笑い続けたいのだと。健太もそれに頷き、二人は夜景を見ながら、出会いと積み重ねてきた時間に感謝しつつ、これからの人生を笑い合いながら歩いていく。

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エブリスタ
エブリスタ2025/12/14
  • 現在の作品もしもあの時