あらすじ

近未来。世界は謎の現象「情報熱死」により、深刻なリソース不足に陥っていた。現実の解像度は低下し、物質はポリゴン化し、食べ物からは味や香りが失われていた。元物理学者で、今は「修復料理人」の葛城レンは、バグった生物を狩り、その記憶データを抽出して客に振る舞うことで生計を立てていた。 ある日、レンは上空から飛来した「天使」を目撃する。天使は圧倒的な高解像度と美しさを持ち、触れるものを消滅させる力を持っていた。レンは天使が残した痕跡から強烈な「現実の味」を感じ取り、天使を狩って食らうことを決意する。助手のアンドロイド・ミナと共に調査を始めたレンは、地下深くに潜む組織「|保存会《アーカイブ》」の存在を知る。 保存会のリーダー、メビウス博士はレンを招き入れる。彼らは世界の「再起動」を目指していたが、その実態は、自分たち以外の全人類を「バグ」として切り捨て、自分たちだけの高解像度な楽園を作ることだった。地上の荒廃は、彼らがリソースを独占した結果だったのだ。 真実を知ったレンは協力要請を拒否。保存会、そして保存会を「癌細胞」として排除しに来た天使たちとの間で、三つ巴の戦いが勃発する。レンは混乱の中で天使の肉を食らい、そのデータを体に取り込むことで身体機能を拡張させ、メビウスを撃破する。 崩壊するシェルターから、レンとミナはさらに地下、世界の「排熱層」へと落下する。そこは物理的な熱とデータの熱が渦巻く地獄だった。天使のデータを摂取しすぎたレンの体は変異し、人間としての感覚を失いかけるが、ミナの献身的なサポートにより自我を保ち続ける。 世界の最深部、「中枢」への門を守っていたのは、レン自身のコピーである「黒レン」だった。黒レンはレンから迷いや飢えを取り除いた「完璧な料理人」だったが、レンは「満たされない飢えこそが創造の源だ」と主張し、自己矛盾を受け入れて黒レンを撃破、捕食する。 ついに辿り着いた世界の中枢。そこに管理者の姿はなく、あったのは未完成のデータが溶け合う「原初のスープ」だけだった。世界は最初から完成などしておらず、ただ放置された鍋の中身に過ぎなかったのだ。スープはレンたちを同化しようと襲いかかる。 レンは世界を「調理」することを決意する。ミナが持つ天使の核(感情データ)と、レン自身の命、そして彼が抱える世界への飢えと愛をスパイスとしてスープに投入する。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2025/12/14
  • 現在の作品【小説】天使の肉のカルパッチョ