あらすじ
天涯孤独の八重は、吉原にて桔梗という芸名で唄に三味線、踊りで身を立てる芸者である。
ある日、家に雷が落ちて瞬く間に火災となり、八重は何もかもを失ってしまった。
元々独り立ちした時や世話になった姐さんの葬儀代などで借金が嵩んでいた八重。
三味線と、今着ている身につけているもの以外何もない。
その上家まで失っては首でも括るしかない。
絶望し、隅田川で入水を考えた八重であるが、そこに龍来屋という茶屋の主人が現れ、ひとまずうちに来いと言ってもらい屋根の下で眠れることになり……
八重はまだ知らない。
主人は「皓月(こうげつ)」という名の隅田川に繋がるお堀の主の大蛇であることを。
数日前偶然助けた子蛇が、皓月の配下であったことを。
お茶屋「龍来屋」は仮の姿で、本当は人の世で「人間のふり」をして暮らすあやかしたちが酒を酌み交わし、酒や料理、時には芸者の三味線や唄で疲れを癒しに来る料亭であることを。
これは、初心な芸者娘と仕事一筋に生きてきた蛇神の、運命をめぐる物語。
※実在の施設や出来事とは関係ありません、フィクションとしてお楽しみください。
※作中の歌詞は参考文献より引用しています。
主要参考文献・引用
『お座敷遊び 浅草花街 芸者の粋をどう愉しむか』二〇〇三年 光文社 浅原須美著
『芸者と遊び——日本的サロン文化の盛衰』二〇〇七年 学習研究社 田中優子緒著
『華より花』二〇〇九年 主婦と生活社 みな子著
『芸者論 花柳界の記憶』二〇〇九年 文藝春秋 岩下尚史著
『吉原はこんな所でございました——廓の女たちの昭和史』二〇〇九年 筑摩書房 福田利子著
『吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日』二〇〇九年 朝日新聞出版 森光子著
『春駒日記 吉原花魁の日々』二〇〇十年 朝日新聞出版 森光子著