あらすじ
夜の街で、猫たちは人知れず戦っている。
人間には見えず、気づかれず、ただ静かに――悪霊を相手に。
ある銀行員は、仕事の帰りに一匹の野良猫と出会う。
名前をつけることもなく、特別に可愛がることもない。ただ、気まぐれに食べ物を与えるだけの関係だった。猫もまた、人間に深入りすることはなく、毎日現れるわけでもなかった。その距離感は軽く、しかし居心地がよかった。
だがある日、銀行員はいつもの時間に戻らなくなる。
夜ごと同じ場所に通っていた猫は、次第に違和感を覚える。空気に混じる、甘く腐った匂い。そして、人間の部屋に残された異様な気配――それは猫にしか感知できない「悪霊」の痕跡だった。
直感的に理解する。
この死は自然なものではない、と。
猫は一匹で悪霊に挑むが、力の差は圧倒的だった。孤独を好み、群れを避けて生きてきた猫は、初めて選択を迫られる。自分の生き方を変えてでも、この夜に残ったものと向き合うべきか。
人間の恨みが形を変え、夜に滞留する世界で、猫は仲間を求める。
それは復讐のためではない。正義のためでもない。ただ、確かにそこにあった「関係」と「痕跡」を、消えないままにしないために。
これは、誰にも知られなかった死と、
その裏側で始まる、猫たちの静かな戦いの物語。