あらすじ
十歳の少女セントラ――愛称トラ。
彼女が神殿で授かったスキルは〈ボール使い〉だった。
「中心があり、等距離で巡っているものをボールとして扱える」
その曖昧で地味な能力は、“ゴミスキル”と嘲笑される。
貧しい街に暮らすトラ自身も、その価値を知らなかった。
だが、毛糸玉が浮いた日から、少しずつ世界は変わり始める。
紙に描いた円は動かない。
水も形を保たない。
けれど、転がる石、丸い器、車輪――
条件を満たした「丸」は、確かに応えてくれた。
試行錯誤の中で、トラは学んでいく。
このスキルは力任せではなく、
“理解し、呼びかけた分だけ”応えてくれる力なのだと。
やがて街で起きた事故をきっかけに、
彼女の力は一人の男の目に留まる。
王都オルビス高等技術院に関わるその男だけが、
〈ボール使い〉の本当の価値――
「世界の形を定義し、動かす力」に気づいていた。
笑われ、見過ごされてきたスキルは、
静かに、しかし確実に未来を転がし始める。
これは、
“ゴミスキル”と呼ばれた力で、
少女が世界を動かしていく物語。