あらすじ
本記録には、一名が証言した“転生儀式当夜の状況”を記す。
仕事できない、友達いない、彼女いない、陰キャ、オタク、ブス、デブ、低学歴。
自分にも他人にも期待せず、人生に希望が持てないアラサー会社員、紅河雪人(こうがゆきひと)。
彼は仕事で心をへし折られた日の夜、トラックの前に飛び出してしまう。
しかし、ある女性が雪人を突き飛ばし、代わりに轢かれて亡くなってしまう。
命を救ってくれたのは咲優輝という美女だった。
ショックを受けた雪人は部屋に引きこもるようになるが、逃げ道を探すかのように「彼女は異世界に転生して幸せになっているはず」と願うようになる。
異世界転生ラノベは、雪人にとって辛い日常から一時でも逃避するための、唯一の心の安定剤だった。
自分でも異世界転生ラノベをWeb小説投稿サイトで書くようになったある日。
雪人の元に一通のDMが届く。
「貴方の小説からは強いマナを感じます」
「僕たちはずっと貴方のような人を探して、ネット中を駆け回っていました」
「僕たちの騎士団長、リゼ様にぜひお会いになって下さい」
──それは、信じられないような「異世界」への招待状だった。
「異世界なら──貴方の弱さはスキルになります。
貴方は落ちこぼれなんかじゃありません。
私は貴方の才能を知っています」
だがそれは、人生に絶望し、不出来な自分に失望し、努力が叶わず傷ついてきた雪人にとって、甘く苦い誘惑だった。
「……どうか、私と共に来てください。
この世界よりも、あなたにふさわしい未来へ。」
全ては命の恩人、咲優輝に異世界で再会するために。