あらすじ
※本作は短編ですが、物語の密度を重視したため、やや長めの一話完結作品となっております。
「婚約は解消する。お前は自由だ」
三年と二日ぶりに私を見た婚約者――イェルケ王子は、そう告げた。
政略で結ばれ、一度も目を合わせてくれなかった巨躯の王子。
ようやく解放されると思った矢先――
「あの時から愛していた」
彼の頭上に、雨は降らなかった。
この国では、嘘をつくと雨が降る。
なのになぜ、三年間も私を避けていたのか。
やがて気づく。晴れた日なのに、彼の肩だけがいつも濡れていたことに。
真実の魔法は、他人への嘘だけでなく、
“自分自身への嘘” も見逃さない。
「彼女を愛していない」
そう心に嘘をつくたび、彼は小さな雨に打たれていた――
私の重荷にならないように。愛を隠すために。
「だったら、一緒に育てませんか。私たちの気持ちを」
不完全な愛から始まる、嘘を許さない国での夫婦の物語。
真実を貫く者の頭上には、いつか虹が架かる。
※短編として完結していますが、物語の背景には、まだ描ききれていない時間と真実があります。
いつか、中長編として “本当の物語の全貌” を描ければと思っています。