あらすじ
広い広いお屋敷で、声をかけてくれた人。
冷たい冷たいお屋敷で、笑顔を向けてくれた人。
「見てみて、綺麗でしょ。これ、あまりにあげる」
ピカピカ光る、宝物をくれた人。
「いつかきっと、あまりの居場所を、あたしが作ってやるからね。約束!」
歳の変わらない姉の奏江だけは、あまりにとって唯一の絶対者であり、家族だった。
館小路家には必要のない、余った子。それが、あまりの名の由来だ。
館小路家は、日本で唯一のこと箏の名家である。現家長、総一郎と厨女との間に生まれたあまりは、病院での産後のケアも受けぬまま、まるで隠されるように館小路家へと引き取られた。
母親である女中は、あまりを産んだ直後にこの世を去った。よって、館小路屋敷にあまりの居場所はない。
学校から屋敷に帰ったとしても、じっと部屋に閉じこもるだけだ。用がある時以外に部屋から出るなと言いつけられているし、あまりから出る用事もない。
だから毎日、宝物を片手に宝来川にかかる橋の下へ立ち寄る。
専門学校の卒業制作用の小説です。
公開日:2012.10.19.