あらすじ
自分を何と呼ぶかなんて、たいした問題じゃない――
そう言い切れたら楽なのに。
同期の前では「俺」、実家では「僕」、メールでは「私」、会議では「自分」。
場面に応じて一人称を使い分けるうち、主人公はふと気づく。
どれもそこそこ似合っているのに、どれもしっくりこない。
自分を呼ぶ自分の声が、どこにも“定住”していないような心もとなさ。
それはもしかすると、これまでの人生のどこかで「自分はこうだ」と決めるタイミングを、少しずつ見送ってきたせいなのかもしれない。
一人称が定まらないまま大人になった人の、ささやかな自己分析の物語。
「どの呼び方を選ぶか」ではなく、「揺れたままの自分をどう引き受けて生きていくか」を、少しだけ考える小さな内省系短編です。