あらすじ
賎民の少女・連城(れんじょう)は、十歳まで「男」として育てられた。育ての親から叩き込まれたのは、毒と薬の知識、舞、武芸、そして過酷な世界を生き抜くための悪賢い知恵。だが、ある事件で男装の仮面を剥がされ、彼女は後宮の最底辺「洗踏房(せだっぱん)」へと流れ着く。
偽造された身分証、偽りの名「美淑(ミスク)」
ただ静かに「死んだことにして」生き延びるはずだった。しかし、彼女には隠しきれない才能があった。
それは、「衣の声を聞く」こと。
衣に付着したわずかなシミ、微かな残り香、糸の綻び。彼女の手にかかれば、それらは持ち主の密会、隠し持った毒、そして隠蔽された殺意を暴き出す「告発状」へと変わるのだ。
王妃の衣から猛毒の跡を見抜いたことで、連城の正体は二人の男、「王の影」に露見してしまう。冷徹な眼差しで獲物を追う内侍・夜鷹(よたか)。絶世の美貌で人心を惑わす内侍・朱炎(しゅえん)。
「お前のその眼と腕、内閣府(ねしぶ)に買い取ろう」
正体露見の代償は、後宮に蔓延る闇。洗踏房、水刺間、尚衣院。後宮のあらゆる場所を渡り歩き、洗濯板で叩き落とせないほどの「汚れ(陰謀)」を次々と暴いていく。
これは、泥にまみれた洗濯女が、知性と度胸、そして「衣の声」を武器に、後宮の頂点――「女帝」へと昇り詰める、逆転の宮廷ミステリー。