あらすじ
二〇四三年、春。
濁った鉛色の空の下、日本は社会保障の崩壊と人口減少で、国家としての輪郭すら失いかけていた。
元銀行員・工藤修平(六十歳)。派遣契約を切られ、資産も未来も尽きた彼が向かうのは、行政が運営する終末処理施設――「ターミナル・ケア・リゾート多摩」。
“名誉ある撤退”という名の安楽死は、もはや救済ではなく、この国が選んだ最終的な効率化だった。
だが、死にに行く途中で、彼は死ぬ。
老老事故――痴呆の高齢者が運転する暴走車両が、修平の乗るバスを粉砕する。
目を開けた先は、色のない冥界。腐臭と怨嗟が流れる闇の河で、修平は異形の女神に出会う。
それは、この国の土台そのもの――伊邪那美。
「数字を書き換えろ。帳簿をつけ直せ」
神は、破滅へ向かう日本を救うため、修平に“命”を貸し付ける。利息はただ一つ――この国の未来を黒字へ戻せ。
次の瞬間、修平は一九九八年へ落ちていた。
母の声、朝の光、味噌汁の匂い。失われるはずだった世界が、まだ「始まる前」の姿で息をしている。
しかも彼の肉体は、過去の自分でありながら、どこか人ならざる完成度を帯びた“極上の器”へと作り替えられていた。
六十年分の記憶と、冷徹な計算。
感傷を切り捨て、修平は決める。草の根では救えない。必要なのは、ルールそのものを書き換える権力。
目指すは霞ヶ関――国家中枢。
これは、滅びのシナリオを知る男が、最悪の未来を「なかったこと」にするために、人生というゲームを二周目で攻略し直す物語。
“オペレーション・再建”、ここに開始。