あらすじ
「……悪いな、今回も『アレ』を使わせてもらう」
俺はマジックバッグから『シュールストレミング)』を取り出した。
発酵という名の腐敗を極めた狂気のニシンだ。
俺は冷静に缶詰に指をかける。本来なら水中で開けるべきだが、そんな時間はない。
プシュッ。
微かなガスが漏れる音と共に、世界が歪んだ。
いや、視覚的には何も変わっていない。だが、そこから溢れ出した「気配」は、あきらかに生物が生存できる領域を超えていた。
「グォ?」
先頭を走っていたオークが足を止める。鼻が良い種族だ。いち早く「絶望」を察知したらしい。
「風魔法:芳香拡散」
俺は缶詰から立ち昇る発酵臭という瘴気を、風のトンネルに乗せた。
目に見えない風の道が、オークの群れのど真ん中へと直結する。
「食らえ」
ドォォォォォォ……ン!!
風に乗った臭気が、爆風のようにオークたちを直撃した。
魔法による物理ダメージではない。嗅覚へのダイレクトアタックだ。
「ブモォォォォォォォッ!?」
屈強なオークたちが、白目を剥いて次々と泡を吹いて倒れていく。
ある者はその場で嘔吐し、ある者は母の名を呼びながら地面をのたうち回る。
地獄絵図だった。剣も魔法も通じない強固な皮膚を持つオークが、ただ「臭い」だけで全滅していく。
「……制圧完了」
彼ら風魔法使いと死霊使いの冒険の物語の開幕です!