あらすじ

死を視る力を持った少女・葵は、生まれた村で“忌み子”として扱われていた。彼女だけが人の身体から漏れる淡い“魂の色”を見てしまう。それを気味悪がった村人たちは次第に彼女を遠ざけ、ついには災厄を呼ぶと責め立てた。葵が逃げ場もなく追い詰められたとき、黒い羽を背負ったような男が現れる。

 「……お前、まだ死ぬ時間じゃない」

 男の名は烏蓮(うれん)。死を司る者——“死神”。
 彼は葵を抱き上げ、村から連れ出し、死神の棲む屋敷へ運ぶ。
 恐ろしい存在のはずなのに、烏蓮はどこか不器用で、そして奇妙なほど葵を気にかける。

 烏蓮は告げる。
 「魂の均衡が崩れつつある。世界を救うには、お前の力が必要だ」
 葵が持つ“魂の選別”の力は、失われた魂を見つける鍵だった。
 だがその力を扱う代償として、葵は自分の“幸福な記憶”の一部を失ってしまう。

 死神の補助者として働き始めた葵は、さまざまな魂の行方を追い、その影に“黒市”と呼ばれる闇組織の存在を感じ取る。魂を金に換え、寿命すら売買する禁忌の取引。やがて葵は、黒市が国家レベルの陰謀と繋がっていることを知る。

 魂の回収を続ける中で、葵は時折、奇妙な既視感に襲われる。
 触れた魂に、必ず“誰かのあたたかい記憶”が混ざっているのだ。

 笑い声。
 手を握られた感触。
 誰かに守られた日の、あの温度。

 だが葵には、その記憶が誰のものなのか分からない。
 烏蓮もまた、葵が見た記憶とよく似た断片を夢に見るという。

 失ったはずの記憶。
 決して触れられないはずの温もり。
 少女と死神の間にある“奇妙な繋がり”は何なのか。

 葵が真実へ近づくほど、烏蓮は苦しそうに目を逸らす。
 まるで、自分の存在そのものを恐れているように。

 黒市の陰謀はついに表面化し、魂の秩序が崩壊し始める。人々は魂を喰う“虚死”に覆われ、世界が終わりへ向かっていく。止める方法はただ一つ——何者かが、魂の歯車を再起動させなければならない。

 しかしその代償は、あまりにも重い。

 葵は知ることになる。
 烏蓮が抱え続けてきた痛みの意味を。
 自分の失った記憶が何を象っていたのかを。
 そして、世界を救う代わりに“何を失う”ことになるのかを。

 ——魂の秤が傾くとき、選ぶのは誰かの死でも顕示でもない。
 少女が世界と向き合い、死神が運命に逆らい続けた果てにある“ひとつの答え”。

 死神に拾われた少女が、魂の運命を変える物語。
 和風の闇と優しさが交差する、涙と救いの幻想譚。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
アルファポリス
アルファポリス2025/11/28
  • 現在の作品死神に拾われた少女は、世界の魂を救う運命だった