あらすじ
舞台は、情念渦巻く戦国の世。
千日回峰行の修行僧、余夏難(よかなん)は、その聖なる美しさゆえに山賊に捕らえられ、異国の男色家である大名に売られる運命に立たされる。彼の存在は、周囲の欲望をかき立てる「聖なる獲物」であった。
一方、山賊の住処には、もう一人の美しき若者、沙呂女(さろめ)がいた。彼は少年でありながら女として育てられ、山賊の主の妻となることを強いられながらも、自身の真の性(さが)と愛を隠し通してきた。沙呂女は、誰にも穢される前に、愛する男と口づけを交わしたいという、切実で純粋な渇望を抱いていた。
捕らえられた禁欲の僧・余夏難と出会った沙呂女は、その高潔な存在に激しい、一方的な恋に落ちる。沙呂女の魂の叫びは、余夏難の強固な「聖」の壁に阻まれ、拒絶されることで、かえって狂気的な執着へと変わっていく。
愛を拒絶された沙呂女は、山賊の主に余夏難の命を要求する。嫉妬に駆られた主が出した条件はただ一つ。「お前が見事な剣舞を踊り、私を魅了することができたら、望みを叶えてやろう」。
沙呂女は、自らの魂と愛の全てを賭けた舞を披露する。この舞がもたらすのは、愛の成就か、それとも破滅か。
これは、「聖なる禁欲」と「倒錯的な純粋さ」が衝突し、美と欲望、そして死が交錯する、凄絶なる愛の悲劇である。