あらすじ

閑散期の寒空の中、夜の博物館でだけ目を覚ますのは――人間ではなく、名器たちだ。 語り手はバイオリン《カノン》。 隣に並ぶのは、一度も「うた」を授からなかった奇妙な楽器《メシア》。 メシアが望むのは、数万年前の異界に口を開く洞窟の底、 原初の音の欠片《グァリ†ジェズ》を見に行くことだった。 黄衣の王と呼ばれるチェロ、 森の黒山羊シュブ=ニグラスの仮面をかぶった緋の淑女、 モンパルナスのカタコンベから“夢の国《ドリームランド》”を経由して、 二挺の提琴は、音の生まれるさらに前――十五次元の宇宙へと踏み込んでいく。 なぜメシアには「うた」がないのか。 「カノンにはあるけどボクにはないもの」とは何か。 一本の弦の同じ一点から、十五の倍音を同時に響かせる“完全宇宙”とは――。 楽器たちの視点で描かれる、 音楽と量子宇宙論とクトゥルフ神話が交錯する、 静かで残酷なコズミック・ファンタジー。 最後に鳴るその一音を、あなたは聴き届けることができるだろうか。

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カクヨム
カクヨム2025/11/28
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