あらすじ

雨の夜、下町の外れにある小さな床屋に、見知らぬ若い女が訪れる。店主の辰雄は、都会の理髪店での接客に疲れ、亡き両親が残したこの店を継ぎ、無口で静かな日々を過ごしていた。 「切れるだけ切ってください」とだけ告げ、うつむいたまま髪をゆだねる女。腰まで伸ばされた黒髪には、長い時間と執着が染みついている。やがて彼女は、自分が地元スーパー店長の“二号”であること、そして本妻と自分の髪が同じだと気づき、耐えられずに来店したことを語り出す。  積み重なった髪が落ちていく音のなか、辰雄の手には昔の記憶―ヤモリの尾を切った日の、生々しい感覚がよみがえる。髪を切る行為と、誰かの痛みを断ち切る行為の境界が曖昧になっていく。  雨の匂いと刃の感触が、静かな夜に重く沈んでいく短編小説。

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カクヨム
カクヨム2025/11/27
  • 現在の作品ヤモリの尾