あらすじ

「エリーゼ・フォン・アークライト! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄する!」

 そう言ってどんどん話を進めてく殿下に、私はとあるものを見せました。 

「これは?」

「精算書でございます」

「は?」

 私はファイルを丁寧に開き、一番上の書類を殿下の目の前に掲げました。

「こちらが、過去一〇年間にわたり、私が次期王妃教育のために費やした教育費、教師への謝礼金、および公務のために新調した衣装代、装飾品代の総額です。すべて領収書を添付しております」

 会場がざわめき始めました。
 私はさらにページをめくります。

「次に、こちらが殿下の公務補佐として私が代行した業務の労働対価。王宮の書記官の平均時給をベースに、深夜割増と休日出勤手当を加算しております」

「な、何を言って……」

「そして最後に、こちらが一方的な婚約破棄に対する精神的苦痛への慰謝料。これは判例に基づき、王族間の婚約破棄における最高額を設定させていただきました」

 私はニッコリと微笑みました。

「締めて、金貨三億五千万枚。なお、支払いが遅れる場合は、年利一五パーセントの遅延損害金が発生いたします。複利計算で算出しておりますので、お早めのお支払いをお勧めいたしますわ」

 大広間が完全なる静寂に包まれました。
 三億五千万枚。
 それは小国の国家予算にも匹敵する金額です。

「き、貴様……。金の話など、卑しいとは思わんのか!?」

 震える声で殿下が叫びました。
 私は首を傾げます。

「卑しい? とんでもない。これは、契約の不履行に対する正当な対価請求ですわ。殿下、ご存知ですか? 愛はプライスレスかもしれませんが、結婚は契約、生活はコストなのです」

 私は殿下の胸ポケットに、その請求書を優しく差し込みました。

 そうして泥舟から脱出できる喜びを感じていましたが、私がいなくなったあと、そちらは大丈夫なのでしょうか?

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アルファポリス
アルファポリス2025/11/28
  • 現在の作品殿下が婚約破棄してくれたおかげで泥船から脱出できました。さて、私がいなくなったあと、そちらは大丈夫なのでしょうか?