あらすじ

万に満たない軍勢。それを迎える形で、十倍を超える大軍団が、平野で睨み合っていた。 太陽の光を受け、風にたなびく長髪。透き通る肌。パッチリとした眼には長い睫毛が縁取られている。意思の強さを物語る眉。 鼻筋の通ったその下に、色気漂う唇は、異性はおろか同性をも魅了する。 「女神」の二つ名で形容される彼女の口から、一つの言葉が静かに発せられる。 「さあ、参りましょう」 その声は風に乗り、周囲を固めていた軍勢は一気に盛り上がる。 口々に、「姫!」「姫様!」「お嬢!」「女神よ!」...呼び名は違えど、全て彼女への熱狂的な声援であった。 他方、大軍団を従える皇帝は、手に持つ扇子を仰々しくかざす。 無言ではあったが、将軍たちの元へ、伝令が走り出す。 皇帝の神輿は、軍の後方中央。兵をすり抜け、最前線へ走る伝令は、手馴れた様子であった。 じきに、太鼓が鳴り響き、ラッパは行軍を伝える。 ゆっくりと歩を進める大軍団。楽団に合わせたそれは、統制が保たれていることを示していた。 アグラッツェ平野。皇帝直轄領最西端に位置するそれは、いつもであれば閑散としており、時折野獣の類が獲物を探して闊歩するような、寂れた大地。 幾度となく戦場となっており、掘り起こせば、その傷跡が確認できる。 大軍団が動き出すのを見た斥候が、軍師へと急ぐ。 軍師たる魔術師は、傍らの「女神」に耳打ちした。 頷く彼女を横目に、魔術師の秘術が発動する。 魔術師を中心として、軽快で、そして独創的な伴奏が始まる。 彼女は、それに合わせて歌い出したのだった。 80年代アイドルソング。それも超メジャー級。この戦場にいる誰もが、その曲を知る由もなかった。 歌声は美しく、可憐で華やか。彼女を信奉する者は、高揚する気持ちを抑えられない。 大軍団に向けて、軍勢も押し進むのであった。 決戦の始まり。その勝敗は――

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小説を読もう2025/11/27
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