あらすじ
世間には、日の当たる場所で喝采を浴びる者と、人知れず静かに己の道を歩む者がいる。
俺、神崎悟(かんざきさとる)は後者のつもりだった。文芸部で原稿とコーヒーの匂いにまみれて、それで良いと甘んじるつもりでいた。
しかし、その放課後に現れたのは――敬語で毒を吐く後輩、神楽鈴鹿(かぐらしずか)だった。
「先輩、部誌の表紙は私に任せてくださいね?」
「お前の“任せる”は信用できないぞ」
「先輩、その反応、可愛いですね?」
気づけば文芸部は半分創作、半分お遊びの遊園地に様変わり。朗読会のリハ、紙飛行機バトル、桜並木でのポスター貼り――些細な放課後のやり取りが、先輩と後輩の距離をじわじわと縮めていく。
静かなつもりだった俺の毎日は、鈴鹿の毒舌敬語と無邪気な悪ふざけによって、いつの間にか恋のページで埋め尽くされていた。
先輩の俺が、後輩に振り回される春――これって、青春って言ってもいいのか?