あらすじ
かつて高校野球のエースとして輝いていた啓太は、肩の故障で夢を絶たれ、今は仕事に忙殺されるだけの疲弊したサラリーマンになっていた。
親友・剛の結婚式に出席した彼は、幸せに満ちた会場の空気に馴染めず、あえて用意された最も目立たない端の席で、身を潜めるように時間をやり過ごそうとする。
「今の落ちぶれた自分を見られたくない」
そう願う啓太の前に現れたのは、かつての恋人・美咲。
10年前よりも美しく、大人の女性へと成長した彼女は、啓太の隣に座り、彼がすっかり忘れていた”ある約束”を口にする。
「ねえ、まだ約束は覚えている?」
それは、別れ際に啓太が照れ隠しで言った「10年経って独り身なら結婚する」という、冗談のような約束だった。
輝いていた過去と、情けない現在。そのギャップに苦しみ、逃げ腰になる啓太。
しかし、彼が座らされた「会場の隅」には、新郎である剛と、彼を待ち続けていた美咲の、ある温かな企みが隠されていた。
そこは逃げ場所ではない。
人生という延長戦のマウンドへ向かうための、最後の準備場所(ブルペン)だったのだ――。
過去の栄光ではなく、泥臭く戦う”今の姿”を愛する人たち贈る、大人の再起と純愛の物語。