あらすじ
すべては、あるアパートで起きた些細な騒音トラブルから始まった。
「隣の部屋から、儀式のような音が聞こえる」
そんな通報を受けた警察だったが、隣室は長らく空室だったことが判明する。
興味本位でこの件を調べ始めたルポライターの「私」は、やがてその不可解な音が、ダム建設によって地図から消された村――「久多村(くたむら)」に繋がっていることを突き止める。
昭和の未解決一家惨殺事件。ダム湖周辺で多発する行方不明者。そして、関係者が一様に口にする「蓋(フタ)」という謎の言葉。
取材を進めるにつれ、「私」の周囲でも異変が起き始める。
録音データに混じる不可解なノイズ。
深夜、無人の部屋から聞こえる話し声。
そして、止まらない耳鳴り。
本稿は、取材の最中に謎の失踪を遂げた著者が遺した、ハードディスク内のデータを復元・整理したものである。
インタビュー記録、警察調書、ネット掲示板のログ、そして狂気に蝕まれていく日記。
それらを読み解いた時、あなたは「蓋」の正体を知ることになる。
――ただし、ご注意いただきたい。
この物語を読み終えた時、あなたの耳にも「それ」が聞こえているかもしれない。